本日、帝劇にて「ミス・サイゴン」観劇して参りました!
市村さんは本公演でミス・サイゴンのエンジニアを引退します。この役は市村さん以外ないほどハマり役だったので、今までの集大成をみせていただきました!!
色々な場面が前回、前々回よりブラッシュアップして、無駄のないパワーの詰まった「ミス・サイゴン」でした。
初期から好きだった、市村&笹本ペアで観劇でき、喜びひとしおです。
感想
エンジニア(市村正親)
この話の主人公はキムとクリスだと思っていたのですが、演じるのが市村さんだと、断然、「エンジニアに代表されるベトナム人の悲劇と生きるたくましさ」がテーマだと思います。
混血で貧しくて、娼婦である母親の客引きをして育った劣悪な環境のもと、アメリカンドリームを見続けるたくましい根性のエンジニア。
これは、市村さん自身の人柄や感性がとてもエンジニアに込められていると思います。立っているだけで、エンジニアはこういう人物だと思わせます。
金がすべてであり、生きるためなら権力に巻かれ、媚びへつらい、おどける。苦しみやアメリカ人に馬鹿にされた悔しさを秘めているけど、トップになるという野心を忘れない。
歌やダンスに、そんなエンジニアの感情すべてが乗っているいるようでした。
適当に手を抜いて、力を抜いておいしい思いをしていたい彼を象徴するような歌やダンスでした。本当に、市村さんの演技は素晴らしかったです。
食べるために生きるっていうのは、したたかに生きることなんですね。なんでもやる。でも、夢は持ち続ける。一番人間らしい役でした。
もう一度はないけれど、一生思いでに残るラスト・エンジニアでした。
キム(笹本玲奈)
色々な女優がキムをしてきましたが、笹本さんが好きです。遠い昔、笹本キム&井上芳雄クリスで観たときがよかったです。
キムは何ひとつ悪くないのに、生まれた国と環境が悲惨だったため早世してしまいます。唯一、クリスと出会い、恋をし、愛する彼の息子をもうけたことが救いだったと思います。
「ミス・サイゴン」を初めて観たとき、こんなにも、ひどい人生ってあるのか、とやりきれない思いに浸っていましたが、苦難しかなかったキムの人生に拍手を送りたいです。
クリスと歌う恋の歌「サン・アンド・ムーン」は一瞬の強いキラキラがあったし、「命をあげよう」をタムに歌う時は母親の顔をしていました。
キムの歌うナンバーは、優しく心が癒される曲ばかりです。
笹本さんはどの役も素敵ですが、キムが一番ハマり役だと思います。アオザイも素敵に着こなしてました。
クリス(上野哲也)
上野さんの舞台は今まで観たことがありませんでした。もう一人のクリス(小野田龍之介さん)は劇団四季「ウェストサイドストーリー」でトニーをしていました。日本人はなれした素敵な俳優です。
上野さんは、歌は難なくこなしていますが、クリスとしては印象が薄いです。クリスはひどいヤツですよね。
売春バーでキムに会った時、紳士面していたけど、結局他の兵士と同じだし、忘れるためにアメリカで結婚しちゃうし。。。
もともとアメリカ兵は、クリスのように、ベトナム人との子供をもってしまった人も多かったのでしょう。しかし、物語はクリスとキムは愛し合っていたのですから、最初は気持ちが救われました。
最大の問題は、クリスはキムとのことをきちんと決着してから結婚すれば良かったのに…もしくは、そうしようとしてたけど、物語ではキムを忘れることしかしていない風に描かれています。
クリス、好きになれないんだよね~。
ジョン(上原理生)
最初はクリスよりひどいやつと思いましたが、面倒見がよく、まともなのはジョンです。現実から目をそらさないし。
最近、とっても売れっ子の上原さんは、タッパもあり、体が大きく舞台映えします。声もテノールで低く、響いてとても頼もしいです。クリスは不安定、ジョンは安定、という設定です。
上原さん単独主演がいつか観たいです!
「ブイドイ」の歌も胸に響きました!
エレン(知念里奈)
以前キムを演じていた知念さんですが、エレンの方がしっくりきます。出番は少ないですが、いい人エレンをそつなくこなしていました。
結局、キムの子を引き取ることになりますが、実際、ブイドイを引き取ったアメリカ人夫婦は、数パーセントだったようです。
まとめ
いつ観ても「ミス・サイゴン」は重いテーマなのですが、クリスのように後方支援の軍人は現地妻を持っていた人もいました。
やはり愛し合っていて、信じていたのに、引き裂かれたところが悲しい話です。
しかし、何かクリスとキムにキラッとした瞬間を見ました。泥沼の中で蓮の花が咲いたように。愛のために生きていたいのに、環境的に現実が辛すぎます。
この公演は、全国ツアーで下記の通り上演されます。
岩手公演 2016年12月10日~11日
鹿児島公演 2016年12月17日~18日
福岡公演 2016年12月23日~25日
大阪公演 2016年12月30日~2017年1月15日
名古屋公演 2017年1月19日~22日