好評を博している「桜華に舞え」北翔海莉さん、妃海風さん以外の心に残った登場人物への感想を書きたいと思います。
衣波隼太郎(紅ゆずる)
半次郎の幼馴染。「半次郎さん!」といつも兄のように慕っています。貧乏へのコンプレックスがあり出世こそ、故郷に錦を飾ると思っています。
東京に出て警察で出世していき、半次郎と再会したときの喜びよう!自然でとても素直な演技に好感もてます。私は紅さんは、凝った役や道化風より、正統派2枚目が一番しっくりきます。2番手は悪役が多いので仕方なかったですが、最後にみっちゃんの親友で、すっきり見れました。すごくいい人でよかった!
立場が政府軍なので、半次郎と敵対しますが、心は昔のまま。どんな時も陰ながら半次郎を助けようとするのが、けなげでした。
西南戦争の場面は、半次郎が銃弾に倒れると、その亡骸を抱いて、
「よく頑張ったな、痛かっただろう、苦しかっただろう」と泣きながら話しかけるのですが、もらい泣きしますよ。
みっちゃんへのエールのようでもあり、嗚咽しました。また、みっちゃんも「新しい時代」とか「バトンを渡す」発言をしているので。抑えるものがなければこの場面は見れません。
西郷隆盛(美城れん)
西郷さんを演るべくしてやる。今の美城さん以外誰が適任でしょう。登場した瞬間、温かい。半次郎が命がけで守りたいリーダー像です。もっといてほしい、美城さん。
「人を愛しやんせ」の言葉を聞いて目が熱くなりました。
美城さんの声、歩き方、西郷さんはこんな人だったと思うほど、情に厚い、人に慕われる人柄を感じさせます。
すごく温かく、大きく、心広い西郷ですが、西郷自身、明治政府に対し何を期待したのか、よくわかりませんでした。
宝塚のいいところは、役柄半分役者半分で評価されると思います。美城さん自体が素晴らしく、集大成の舞台なので、申し分ありません。ただ西郷は何を目指していたか、1回ではわからなかったです。
私には、明治政府についていけなくなり、要人でもあったにもかかわらず鹿児島へ帰ってしまったように見えました。西郷もまた最後の武士で、自身の信念が貫けないと感じ、死に場所を薩摩に見つけたのでしょうか。
本当に、もう~美城さんに泣きました!!
大谷隆俊【大谷吹優の父】/岩倉具視(美稀 千種 )
大谷隆俊は城を死守する誇り高い会津武士でした。一幕ですさまじさがありました。みっちゃんとの殺陣の場面は迫力あります。命がけで戦った会津の方々は大河ドラマ「八重の桜」で見ましたが、この一場面ですべてを表現しています。
岩倉具視は公家でありながら、西郷さんに臆することなく意見を曲げない、しっかりした人物に描いています。こんなに声を荒げる公家がいるのかと思うほどです。美稀さんの役作りはいつも、きめ細かく印象に残ります。
八木永輝(礼 真琴)
この役がいないと物語の悲劇性が生まれません。愛奈姫を守れなかった贖罪の気持ちが強く、半次郎を恨んでいる。でもね、この役ちょっとボロボロすぎる。もうちょっと潔さがほしかったです。
西南戦争で私怨でみっちゃん撃っちゃうし。もうちょっと会津陥落は時代の流れだった、みたいな演出はなかったんでしょうか。
山縣有朋(壱城 あずさ )
史実はわかりませんが、政府高官って高飛車だったのかなと思う一面がありました。事実、山縣有朋はワンマンだったようなので、もう少しインパクトがほしかったです。
川路利良(七海 ひろき)
実在の人物です。衣波隼太郎(紅)と同じく薩摩の貧しい出身から出世した人物です。ただ、隼太郎と同じ場面に出ていることも多く、正直違いがわかりません。
しいて言えば、冷静に薩摩を扱っていることでしょうか。隼太郎のように情にもろくない冷徹な感じでした。
中村スガ【桐野利秋の母】(夢妃 杏瑠 )
前回「こうもり」のロザリンデを好演した夢妃さん。今回は上級生みっちゃんの母役です。鬘の変化で時の流れを表現していました。
家族思いで、子供達をとても愛してる感じがわかりました。子供を失ってしまった悲しみを自分の記憶から消すということで、最終的にボケてしまう。辛いことがありすぎると、記憶を消すのですね。
難しい老け役を情に厚く演じました。
犬養毅(麻央 侑希 )
報知新聞の記者として西南戦争に従軍し、のちに総理大臣まで務めた有名な人物です。「話せばわかる」の人です。
舞台は老人犬養が暗殺される場面から始まります。誰が犬養なんだろう、と思って見進めていると、新聞記者役の麻央 侑希 さん。
次に出てくるときは、銀橋を民衆と歌いながら説明するカワラ売りでした。
また、東京でボロボロの会津武士八木を助けます。更に政府軍に入隊した八木とは西南戦争の場面で再会します。
舞台最後で老人犬養に戻り、明治維新から西南戦争までを振り返ります。犬養はストーリーテイラーの役割でもあり、非常に目立って、今回麻央さん、良い役でした。
竹下ヒサ(綺咲 愛里 )
可愛い里の娘です。隼太郎と結婚したかったのに、親が半次郎との縁談に決定してしまう。この時代、恋愛結婚は難しかったのでしょう。
しかし、ヒサはけなげにも半次郎に尽くそうと努力します。半次郎が東京に行っても家族を守ります。ふわふわしたあーちゃんが、しっかり者の強い女性を演じて新鮮でした。
隼太郎をずっと好きだったかもしれないのに、それを封印して、半次郎一家に馴染もうとするのが偉いです。
政府軍が薩摩に攻める際、隼太郎が半次郎の家を訪ね、ヒサと再会する場面。ヒサが「帰れ!」と叫びます。かつての恋人に銃を向けるまで半次郎一家と共にいるのが、悲しくも自分の立場を守る、きりりとした女性でした。あーちゃん、好演してました。
愛奈姫(真彩 希帆 )
実際、豪傑の姫なのに、かなり湾曲され、事実無根である娼婦になったと描かれています。これね、ちょっとひどいよ、齋藤先生!
松平照姫と言えば会津藩の姫で、松平容保の姉のような存在。強くて優しくて、もっとも頼りになる女性リーダーの歴史をなんで、娼婦に落ちた姫にするの?
精神が弱い姫に描かれて、本当に会津の方に申し訳ないと思います。活躍する場面を与えてほしかったです。この役は本当にびっくりです。
前回の公演は全く違う感動を与えてくれます↓
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