『殉情(じゅんじょう)』一之瀬航季さん版配信、よかったです!
映画やドラマで春琴抄は取り上げられていますが、
個人的にはこの作品は宝塚版がいいなと思います。
佐助は春琴のお化粧をしてあげますが、宝塚でオブラートに包む方が好きです。
介助が必要な若い女性が日常生活をするには生々しいことも多い。
それらをオブラートし、こちらの想像を膨らませてくれる演出が宝塚の好きなところ。
しげ役美風 舞良さん以下、主要上級生は帆純 まひろさん版と同じキャスティング。
主演二人が変わると周囲もどう変わっていくのか観たいけれど、
一之瀬版で作品を堪能、一之瀬さんに心震えました。
キャスト一人一人が生き生きとし、この作品の底力になっていました。
感想
佐助 一之瀬 航季
お稽古期間が長く、大事に温めてきた作品とおっしゃっていた一之瀬さん。
佐助役を愛おしそうに大事そうに演じてらっしゃいました。
日本物が似合う方と思います。黒髪にスッキリした着付け、細すぎずスタイルもいい。
佐助からは「献身」の一言しか浮かびませんし、愛があるから「献身」できるのでしょう。
身分違いとはいえ結婚を経ずに男女の愛を昇華させるのが、どんなに苦しいか。
子供まで成したであろう中なのに、名乗れず語れず、その気持ちの出口は、
ただ「献身」することで膨大な気持ちをエネルギーに替えていく。
丁稚を兼務している佐助は、慢心せず周囲ともうまくやろうとする。健気な性格です。
一之瀬さんの苦しい歌も、表情も春琴を見る瞳も、とても素敵でした!
春琴 美羽 愛
セリフ回しがよく声が通っています。春琴のイメージで清楚でパッとした美人。
いつものかわいい美羽さんが気が強くキリリと苛立っているのも新鮮。
春松先生に褒められたり、佐助に同調された時に見せる口元が緩む表情も可愛らしい。
目の見えない場面と、目が見える(であろう)場面が交互に来る演技が自然でした。
お稽古大変だったと思います。
春琴が佐助に素直になっていたら、見栄やプライドを持たずに接していたら、
どうなっていたでしょう。最後の悲劇は起こらなかったかも。
それを悲劇と捉えてしまう私は「献身」はできないのでしょう。
春琴の佐助に対する気持ちは最後の場面まで、ハッキリ言わないのですが、
目をつぶすほど自分を愛してくれているとは思ってなかったから驚き、
うれしかったと思います。
プチフィナーレで佐助と春琴が笑顔で幸せに踊るのが幸せに思います。
利太郎 峰果 とわ
峰果さんの独特のセリフ回しが好きです。
歴代利太郎も強烈なインパクトでしたが、峰果さんは作品になじんでました。
おそらく利太郎の印象が色濃くなりすぎるより、意地悪なところだけクローズアップ。
しげ 美風 舞良
春琴の両親は無理矢理でも二人を結婚させればよかったのでは?
老舗問屋の主にしては寛大な両親と思います。
夫安左衛門 羽立 光来さんとともに温かい雰囲気でした。
春松検校 舞月 なぎさ
春琴同様、目の見えない演技に苦労なさったと思います。
春松先生は、座っていることが多く表現が難しかったと思います。
セリフも抑え気味に春琴の尊敬を集めている、重厚感がありました。
2部幕開きで別役で踊ってらして、ベテラン発揮ぶりに締まりました。
マモル 鏡 星珠
マモル役で注目な鏡さん!目立っていました。等身大の若者で、若くてもそれなりに
きちんと考えている真面目なマモルなんだなと思います。
石橋教授 紅羽 真希さん、ユリコ 二葉 ゆゆさんとの演技は、その場が和みました。
マモル達、三人の場面では明治時代の女性の考え方も現代とは異なり過ぎること、
異なるので困難も多いけど、同じような悩みもある、そんなことも感じました。
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