劇団四季新作「ノートルダムの鐘」を観てきました。ディズニー版も観ていない素の状態で行きました。まさに、渾身の作品です。劇団四季は確かな演技で定評があります。この作品は深く深く胸に突き刺ささりました。カジモドの切なく悲しい愛の物語が軸です。彼はひとすじの光を見つけます。このお話は、登場人物一人一人が闇を抱えています。
感想
舞台セットとしては非常にコンパクトです。セットはシンプルで、振付や小道具で表現していました。場面転換が早く立体感もあり、引き込まれます。1階席で観ましたが、セットが高いので目線が合う2階も経験してみたいです。それほど前方席でない方がいいです。
と言うのも、フロローとカジモドの汗などがすっごい散乱しています…適当に離れている方がいいです。気になる方は。
カジモド(田中彰孝)
大聖堂の鐘のある部屋。カジモドが住んでいます。毎日毎日全身で鐘をついています。近くで突くから耳が聞こえづらくなります。ひどいですよね、こんな仕事。まず、それを感じました。
舞台上で一部化粧をほどこすのも演出でした。
カジモド役は身体的にも難しい役です。背中は曲がって常に中腰、がに股で歩き、滑舌も悪くうまくしゃべれない。でもお客さんに伝わるようにセリフを言わねばならない。
体が不自由な人の役を演じるのが大変だろうなと思います。脳の発達も少し遅いのかな?と思わせるピュアな感情。
エスメラルダと出会い初めて知った恋なのに、彼女の心はフィーバスのもの。顔の醜さのせいでカジモドは失恋を味わいます。その時の背中の寂しさといったら…
でも、エスメラルダは彼を大事な友達だと言い、カジモドも彼女を処刑から救おうとします。結果的にエスメラルダは死んでしまいますが、彼女の亡骸を抱きながら、何年も抱きながら白骨化していったカジモド。
これほどの愛がありますか?
男性として好きになったけど、報われなくれもそれが何なんですか?と思いました。
生まれてからフロローしか人間を知らず、彼に閉じ込められて育った可哀そうな青年。生まれてきた意味を見つけた瞬間、昇華され死んでいく、なんて人生でしょう。
それでも、生き抜く。
カジモドに強い感動を覚えました。
エスメラルダ(宮田愛)
セクシーなジプシー娘エスメラルダ。舞台では結構濃密なシーンもあり、ディズニー作品ぽくはないヒロインです。3人の男に愛されて、翻弄されながら懸命に生きます。
納得いかないことには屈しない強さ、顔に対する偏見を持たないピュアさがあります。
「サムデイ」の曲は処刑が決まった瞬間の歌だったんですね。鎮魂歌のようです。この曲は名曲です。いつ聞いてもじんわり感動します。
フロロー(野中万寿夫)
野中さん、狂気のフロローを怪演です。フロロー醜いです、心が。一見立派な聖職者ですが、心が狭い。
フロローはどうやってこの人生を送ってきたかを流れるように説明がありました。彼自身が抑圧された人生を送り、我慢してるものがあったから。醜くなる過程、とてもわかりやすかったです。
ライオンキングやマンマミーアで拝見した頃より、すっきりされて、フロローはまり役です。カジモドが主役なのに、フロローが主人公だったのか?と思うほど、醜さ、狂っている、固執という点で印象的でした。
2幕ラスト、衝撃の結末を迎えるフロローです。